「指飛び」という状態は、脱皮するトカゲ類にはよくある症状で、ヒョウモントカゲモドキも例外ではありません。
ペットショップで「爪欠け個体」、「爪飛び個体」とたまに書かれていることがありますが、これは先天的な遺伝子異常ではなく、飽くまでも後天的な怪我によるものが原因で起きるものです。
爪だけが欠けている場合もあるかもしれませんが、爪を含んだ指ごと欠落している場合もあるでしょう。これが「指飛び」です。
ヒョウモントカゲモドキの指飛びの原因
(その1)
飼い主の不注意による怪我が考えられます。
掃除をする時、飼育ケージにヒョウモントカゲモドキの指を挟んだり、ハンドリング時に落下させ、怪我をさせて指を骨折、更にそこが変形すると、その部分から指が壊死し、最悪、欠落してしまい、指飛びを生じることがあります。
これは余談ですが、トカゲやヤモリ類は危険が迫ると自切といって、自らの尾を切って逃走します。
尾には自切点というものがあり、尾に過負荷がかかった場合、そこからちゃんと切れるようになっています。
自切点から切れた尾は再生可能ですが、別の場所から強引に千切ってしまうと、再生は不可能です。
「尾」ですらそうなのですから、「指」は一度欠落してしまうと、新しい指が生えてくるという都合の良いことは、トカゲやヤモリでさえも起きません。
指飛びは、ヒョウモントカゲモドキにとっても、飼い主にとっても辛いものです。
(その2)
脱皮不全。
飼育下の環境(温度や湿度、ストレス等)調整が悪く、脱皮不全になってしまうと、ヒョウモントカゲモドキの指飛びは高い確率で発生します。
特に、湿度が足りずに乾燥状態の飼育環境では、脱皮不全が起きやすいです。
脱皮って何?
脱皮、って何でしょうか?
人間の新陳代謝に当たるのが、爬虫類にとっての脱皮です。
動物の細胞は日々、生まれ変わっています。
健康な人の新陳代謝は28日程度の周期で行われるとされていますが、それは徐々に行われるものであり、28日後、急にベリッと一皮剥けて、新しくツルンとした肌に生まれ変わる、なんて人はいませんよね。
でも、そんなことができてしまうのが、ヘビや、トカゲや、ヤモリ類です。
勿論、ヒョウモントカゲモドキもそうです。彼らの場合、(個体にもよりますが)2週間くらいのサイクルで脱皮を行ないます。
ヘビが脱皮する場合、「ヘビの抜け殻」で表現されるように、脱皮後は「私はヘビでした!」と宣言しているかのような形状の抜け殻が残ります。ヘビの脱皮は、口の部分から剥がれていき、それはあたかも靴下を裏返しながら脱ぐように、古い皮が裏返りつつ、一繋がりに剥けていくから、脱皮後の皮の形状もヘビっぽいのです。
ですが、ヒョウモントカゲモドキの脱皮は、体の表面の皮がバラバラに剥けていきます。
脱皮不全で指飛び
前述の通り、ヒョウモントカゲモドキの脱皮は一気に剥けない仕組みのため、体の部分ごとに、どうしても差異が生じるのは仕方ないことです。
自然環境下では、地上を這う際、指先がザラザラした物に引っ掛かり、細い指先部分の脱皮も比較的スムーズにできるでしょう。
好きに移動できるので、脱皮に適した湿度の多い場所に行けるでしょう。
ですが、飼育下では飼い主が気を配ってやらねばなりせん。
特に湿度不足で脱皮不全を起こした個体が、指の古い皮を除去しようと試みて失敗し、自分で指を噛みきってしまう(指飛び)こともあります。
脱皮不全のため、指先だけ古い皮が残ったままだと、まるで白い指サックを被ったようになります。
除去できなかった古い皮が乾いて固くなり、指先にくっついて取れなくなり、放っておくと、古い皮のせいで圧迫された指が壊死し、欠損、いわゆる「指飛び」が起きてしまいます。
まとめ
ヒョウモントカゲモドキの指飛びは、見るからに痛々しいものです。それを防ぐため、脱皮不全を起こさないように、湿度には特に気を配りましょう。
脱皮不全を起こし、途中で脱皮をあきらめてしまった個体は、指先温浴させ、濡らした綿棒でそっと擦ってやるなどして、自然脱皮するのを促してあげましょう。固くなった皮を強引に剥いてはいけません。細菌感染の原因になります。
自分ではどうしようもできない場合は、専門医に連れていき、診てもらいましょう。流動パラフィンを使って脱皮不全を治してくれるでしょう。
適切な時期を見計らって脱皮不全を予防、処置することで、ヒョウモントカゲモドキの指飛びを防ぐことができるのです。