爬虫類脳、って聞いたことがありますか? アメリカの医学博士、ポール・ マクリーン氏の「三位一体脳」論に出てくる脳の話です。
人間の脳を、爬虫類的脳、旧哺乳類脳、新哺乳類脳の3つに分け、かつ、それが三位一体に統合してきたゆえに、人間は現在まで進化し、また、人間が人間足り得る思考と行動力を兼ね備えてきた、という持論です。
複雑な構造の脳を持つ人間が神経障害などに罹る(例を挙げれば、脚気です。ビタミン欠乏により、心不全や神経障害を発症します)のは、ごく当たり前のこととして……
では、最も原始的で本能的レベルの爬虫類脳を持つヒョウモントカゲモドキが、その脳に神経障害を生じた時、どのような症状を示すのでしょうか?
ヒョウモントカゲモドキの神経障害の症状や、その原因
神経障害とは、脳神経や自律神経系などの神経症状のことです。
ヒョウモントカゲモドキに主に見られる症状としては、
激しい発作→目の焦点が合わず、狂ったようにバタバタと暴れ回る、突然ひっくり返る、ひっくり返ったまま起き上がれない、いつも落ち着かなく体を動かしていて強制給餌もできない、などの明らかな異常行動。
爬虫類がひっくり返る状態は、非常に危険な兆候を示しています。
斜頸などの平衡異常→首をいつもどちらか片側に傾けている、首を左右に振り続ける、奇妙に思えるほど首を上に傾け続ける、バランス感覚が悪くうまく歩けない、餌までの距離感がつかめない、よく転ぶ、など。
旋回運動→自分の尻尾を追いかけるように、その場でグルグルと回り続ける。
神経障害を発症し、重篤化すると、餌を食べられなくなり、水も飲めなくなり、成長過程で必要な脱皮もできなくなります。
その場から動くことができなくなり、強制給餌も受けつけてくれないとなれば、もう打つ手はありません。
神経障害の原因としては、
- 先天的なもの(遺伝や、無理な交配を繰り返す)
- 後天的なもの(感染や中毒、外傷や、栄養不十分)
の2つが考えられます。
ヒョウモントカゲモドキの先天的な神経障害について
エニグマ=謎という意味の名を持つヒョウモントカゲモドキの品種には、愛好家なら、少なからず心惹かれることでしょう。
模様は不規則で複雑、まるで水彩画で描いたようなグラデーションめいた色彩の体表は、芸術的とも言えるほどの美しさです。
ですが、エニグマという品種には、多かれ少なかれ神経障害がある子が多いのも事実です。
エニグマの血統に神経障害があり、高確率で後世に遺伝します。
先天性の神経障害は治ることはないのです。
品種改良のために、近親交配を繰り返したことも原因の一つです。
たくさんのブリーダーが神経障害の因子を除去しようと試行錯誤していますが、成功例はありません。
ヒョウモントカゲモドキの後天的な神経障害について
代謝性骨疾患(クル病)において、強直性痙攣(テタニー)というものは、筋肉が固くなり、激しい痛みと共に痙攣する症状が出ます。
痙攣は、長時間続きます。
脳からの指令を無視して、勝手に体が硬直、痙攣するので、これも一種の神経障害と言えます。
血漿中のカルシウムイオン濃度が極度に低下すると、脳への神経障害が起き、神経や筋肉を興奮させます。
それが高じると、強直性痙攣が引き起こされます。
まとめ
先天的な神経障害の治療法はありませんが、手元に受け入れた以上、責任を持って世話をしてあげましょう。
後天的な神経障害は、幼体から飼育環境や食餌に注意し、発症しないように気をつけてあげましょう。